電子書籍市場の拡大が見込まれる中、出版社などに著作権に準じる著作隣接権を与える法制定の議論が進んでいる。作家や漫画家らの著作権者に加え、出版社なども海賊版への訴訟を直接行えるようにし、作品の電子化を推進するのが主な目的だ。流通環境の整備につながるとする声の一方、権利内容が不明確で著作権者の利益を妨げる懸念も指摘されている。漫画家の赤松健氏と専修大文学部教授で出版デジタル機構会長の植村八潮氏に意見を聞いた。(山田泰弘)
植村八潮氏「デジタル時代対応の権利」
◯電子書籍の健全市場に
--著作隣接権は、なぜ必要なのか
「デジタル時代が到来した今、紙の印刷物の時代に比べ、海賊版対策は急務となっているが、現在の著作権法では、出版社は海賊版に対し、直接訴訟を起こすことができない。電子データはコピーが容易で、あっという間に世界中に海賊版を流通させることもできる。紙の本をコピーして、紙の海賊版の本を作っていた時代とは、スピード感が桁違いだ。電子書籍を含めた出版物の権利を、デジタル化時代に対応できるものにしなければならない。小説や漫画などを世の中に伝達する形に仕上げた出版社などにも著作隣接権を認め、海賊版に素早く手を打てるようにすべきだ」