日産自動車は20日、電気自動車(EV)「リーフ」を一部改良した3モデルを発売した。従来モデルよりも約40万円安い廉価版「S」グレードを設けたことで、実質的な購入価格は補助金などを活用すると250万円を切るケースも出るという。車両の軽量化や省エネ技術などで、1回のフル充電による走行距離も従来の200キロメートルから228キロメートルに伸ばした。EVの弱点とされていた価格や走行距離を改善して拡販につなげたい考えだ。
今回、購入しやすいよう価格を334万9500円に抑えた新グレードも設定。国の補助金も最大で78万円受けられる。モーターに使うレアアース(希土類)のジスプロシウムの量も40%削減した。上級グレードには、バッテリー消費量を計算し、少ない電力で目的地まで行けるカーナビゲーションを標準で搭載。急速充電器がある日産の販売店や公共施設なども案内する。
同日会見した日産の西沢正昭常務執行役員はEVについて「印象として価格が高い」としながらも、「燃料代と維持費が安い。初期費用だけでなく、総合コストをお客さまに話している」と、廉価モデルの投入で拡販を図りたい考えだ。
また、充電器不足に対する不安解消に向け、国内販社の急速充電器設置店舗数を現在の400店から、今年度末までに700店舗に増やし、販社の3店舗に1店舗の割合にする体制強化も併せて発表した。
日産は今回の一部改良でEV販売台数を一気に増やし、2016年度までに、提携する仏ルノーと合わせて世界累計150万台の達成に弾みをつけたい考え。
リーフは10年12月に発売されたが、これまでの販売台数は日本や北米を中心に世界で計約4万3000台にとどまっており、「目標達成には価格面も含め、さらなる野心的な戦略が必要」(証券アナリスト)とされている。
日産の志賀俊之最高執行責任者(COO)は「人類はいずれ再生可能エネルギーに移らなくてはならない。覚悟と大義を持って頑張っている」と脱ガソリンの意義を強調する。しかし、ハイブリッド車(HV)「プリウス」が爆発的に売れ始めたのが、低価格のホンダ「フィットHV」が出てからだったように、EVでも低価格の競合車種が必要との見方もある。
量販EVでは三菱自動車が「アイ・ミーブ」を販売しているが、軽自動車がベースのためリーフとは直接競合しない。EV市場が活性化するには、「市場が開花するのはまだ先」としてリース販売にとどまっているマツダやホンダ、さらには最大手のトヨタ自動車の本格参入が不可欠といえそうだ。