都心の交通大動脈、首都高速の老朽化対策をめぐる議論が大詰めを迎える。国土交通省と首都高速道路会社は今春、それぞれ「有識者会議」「調査研究委員会」を立ち上げて議論を始め、有識者会議は都心環状線の“地下化”を提言したが、調査研究委は大規模修繕と更新を軸とした議論を展開。方向性は定まっていない。
首都高は1号線の芝浦-京橋間開通から50年が経過しているが、これまでは補修が中心で本格的な対策は進んでいない。だが、議論が深まれば深まるほど問題の根深さが浮き彫りになり、結論が出るまでには時間がかかりそうだ。
最大のネックは財源
「あっちは司馬遼太郎の歴史の大局を描く世界観、こっちは藤沢周平のように庶民の日々の暮らしを描くようなものだ」。首都高速の調査研究委員長を務める東京都市大の涌井史郎教授は、有識者会議が9月にまとめた提言書についてこう語った。
涌井教授がいう“あっち”という有識者会議は「都心環状線の高架部分をすべて地下化して再生を目指す」など、首都高の老朽化対策だけでなく、世界都市・東京の競争力向上の一環というスタンス。