2月28日、富士重工業の自動車事業の主力生産拠点、群馬製作所の本工場(群馬県太田市)は一堂に集まった役員、従業員らの涙交じりの大きな拍手に包まれていた。この日の軽商用車「サンバー」のラインオフをもって、同社は軽自動車の生産を終了。「テントウムシ」の愛称で知られる「スバル360」で1958年に参入して以来、数々のユニークな車を送り出してきた軽自動車の開発・生産の歴史に幕を下ろした。
さらば「サンバー」
最後のサンバーを見つめる従業員や開発・生産に携わったOBの目は潤んでいたが、吉永泰之社長ら経営陣に感傷の様子はない。昨年打ち出した2015年度までの中期経営計画を策定する過程で、経営陣は歴史的な事業、市場成長が見込める分野であっても、自社の強みを発揮できないものからは撤退する決意を固めていたからだ。
今もサンバーは、輸送事業者などから絶大な人気を誇っている。だが、軽は市場が国内に限られるうえ、スズキ、ダイハツ工業などの大手が低価格の「コモディティ(日用品)」として商品力を強化しており、吉永社長はこのまま継続しても勝機はないと判断した。
さらに昨年度中にはごみ収集車事業、風力発電事業、クリーンロボット事業からの撤退も相次いで決めた。