【ニッポン経済図鑑】ソニーイーエムシーエス湖西サイト (1/2ページ)

2012.7.2 05:24

 ■高品質生む匠の技とシステム 受け継がれる「こしらえ」精神

 作業台には、ドライバーなど十数本の電動工具がぶら下がる。生産品目につけられたバーコードを読み取ると、モニターに作業順序が表示される。組み立て工程は厳重に管理され、人為ミスを排除するため作業に関係のない工具は一切作動しない。

 ソニーグループのソニーイーエムシーエスが運営する湖西サイトには、6年前に開発された「E-ASSY(イージー・アセンブリー・サポート・システム)」が全面的に取り入れられ、従業員の作業を支援する。

 少人数のチームで組み立てるセル方式の作業に電子化したマニュアルを徹底的に組み込み、一本のねじを締める順序まで管理。製品検査にはソニーがデジタルカメラで培った画像認識技術が応用され「電子の目」が不良品を見極める。

 生産品目は、映画館の大手運営会社やテレビ局といったユーザーの要望に応じたカスタム製品や高性能機器が多く、少量生産のためラインの自動化は難しい。中には1カ月に1台、半年に1台しか手掛けない製品もある。従業員の技術を保つのも容易ではないが「熟練従業員の匠の技を十分発揮しつつ、システムとの融合で高品質の製品を作り出す」(杉浦俊之サイト長)。

 1969年にソニーオーディオとして発足した湖西サイトは、80年代の民生用CDプレーヤーや業務用LDプレーヤーをはじめ、90年代のデジタルVTR、ハイビジョンカムコーダーなど数々の「世界初」となる製品を送り出してきた。

 昨年12月に発売された世界初の家庭用4Kプロジェクター(168万円)も、映画館向けのデジタルシネマプロジェクターや放送局向けの業務用カメラで培った技術をもとに、ここで生まれた。フルハイビジョンの4倍に当たる解像度を持つ鮮明な「4K映像」を投影できる最先端の映像機器だ。