この“たたき台”をもとに国交省都市局が中心となって、超小型車導入のガイドラインが決まった。コンセプトは「低炭素まちづくりに必要なモビリティ」。看板の表現がやや変わったものの、高齢者にとって安全で環境にも優しい移動手段という考え方は一貫している。
これにより、1963年の法改正で決まった現在の「普通自動車」や「軽自動車」といった5つの車種区分に、新たなカテゴリーが追加される。約50年ぶりに誕生する新市場は、国内の自動車市場の縮小に苦しむ自動車メーカーにとって、願ってもない官からの“アシスト”になるはずだった。
既存車との共生カギ
ところが、メーカー各社の反応はあまりにも冷めている。
「メーカーとして市場性があるとみていれば、役所がどう動こうと、自分たちで製品化に向けて本腰を入れる。現段階で商品化していないということは、市場性がないと判断しているということ」。試乗会に出展したあるメーカーの幹部は、こう切り捨てる。
彼らを無関心にさせるのは「市場規模がまったく読めない」(マーケティング担当者)ことが理由だ。導入意義ばかりが先行し需要の詳細な調査はない。彼らが特に懸念するのは超小型車の利用の仕方だ。実証実験では公道を一般車両と一緒に走ったり、観光地で歩道を走ったりと、状況がまったく異なる。ユーザーも高齢者、観光客、商店街関係者などさまざまだ。
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