2012.5.23 05:00
生産の「国内回帰」を探る主なメーカー【拡大】
日本や欧州より米国の人件費が安いことも、米企業の国内回帰を誘う。米ボストン・コンサルティンググループは、製造業が中国から米国に戻れば国内雇用が80万人増えると試算する。
PCメーカー顕著
「脱・中国」の動きは日本メーカーにもみられる。特に顕著なのはパソコンメーカーだ。
「中国の人件費高騰で、コスト差は縮んできた。高品質な『メード・イン・ジャパン』製品を輸出する好機だ」と話すのは富士通の担当者。同社は2013年度の日本から海外へのパソコン輸出台数を、東南アジアや中近東を中心に11年度比3倍の220万台に伸ばす方針。その切り札が国内工場へのロボット導入による生産革新だ。すでに島根県など3工場で一部ラインにロボットを導入。今後は他工場にも広げ、生産増強とコスト削減の両立を図る。
「メード・イン・東京」を売り物にするのは日本ヒューレット・パッカード(HP)。昨年8月からデスクトップ型を手掛ける昭島事業所(東京都昭島市)に、中国からノート型の生産も移した。中国レノボも法人向けパソコンの一部を中国から日本での生産へと切り替える方針で、いずれも納期短縮やブランドイメージの向上を狙う。
また、キヤノンも13年をめどに宇都宮事業所(宇都宮市)で、カメラ用レンズの生産をロボットだけによる「無人化生産」にシフトする方針だ。国内拠点維持のためには、ロボット導入による労務費削減が欠かせないと判断した。富士ゼロックスも、12年度内に商業用デジタル印刷機の生産を中国から日本に移す方向で検討している。
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