関西もようやくサクラの季節が到来し、真新しいランドセルを背負った新1年生の姿が目立つ。ランドセルは数万円と高価で、子育てで物入りな家計にとって負担は大きい。そんな苦労を少しでも軽減しようと、小学校へ入学する社員の子供に50年以上もランドセルを贈り続けている企業がある。デジタル家電の雄、ソニー。背景には同社の成長を支えたひとりの財界人の思いが込められている。
「おめでとう」「お父さんお母さんに感謝する気持ちを忘れないで」。今年2月、ソニー本社で開かれた贈呈式。中鉢良治副会長が新入学児童ひとりひとりに、言葉をかけながらランドセルを手渡した。
昭和34年、創業者の故・井深大氏が社員の子供の就学を祝い、家計の負担を少しでも軽くしようと発案した。関西や東北なども含めた全国の社員が対象で、50年以上にわたって計約2万8千個のランドセルを贈った。井深氏は教育活動に熱心なことで知られ、ランドセルを贈ることで学ぶことの大切さを伝える思いもあるという。
ソニーが急成長を遂げたのは、創業者の井深、盛田昭夫両氏の2人の力によるところが大きいのは周知だが、2人を支えたソニーの前身、東京通信工業の故・万代順四郎取締役会長ら経営陣の存在も忘れてはならない。