関西電力大飯原発(福井県おおい町)の再稼働に向けた政府の判断が先延ばしされ、夏の需要期に再び電力不足に陥る懸念が高まってきた。電力不足が続けば、ようやく上昇気流に乗り出した企業の生産活動が滞るのは必至で、企業は海外生産の拡充や自前の発電施設の設置といった対応を迫られている。ただ、こうした取り組みには空洞化による失業率の上昇や投資コスト増といった副作用も多く、政府の無策に産業界の不満は高まるばかりだ。
「政府や東京電力の泥縄的な対応をみていると、6月には『やっぱり7月から計画停電を実施します』と通告することもありそう。とても信用できない」。大手自動車の首脳は、原発の再稼働に向けた政府の対応にこう不満を漏らした。
自動車業界は昨夏の電力不足を受けて、休日の土・日曜日に工場を稼働させ、木・金曜日を休業にする輪番休業を実施。当時は東日本大震災によるサプライチェーン(供給網)寸断による部品調達難の影響もあり、生産は通常時に比べ2~3割落ち込んでいたが、今年はエコカー補助金による新車販売の好調もあり、各社の工場はフル稼働状態だ。「従業員やその家族、部品や物流などの関連業界の負担も大きく、今年は基本的には輪番休業には取り組まない」(日本自動車工業会)方向で、「今夏に電力不足を切り抜けられるかどうか不安」(自動車大手)との声が上がる。