店舗や営業担当者を抱えず、生命保険商品をインターネットで販売する「ネット生保」が快進撃を続けている。保有契約件数は専業2社の合計で生保全体の0.1%にすぎないものの、大手生保の半分程度の保険料や商品設計の分かりやすさが受け入れられ、20~30代を中心に契約数を伸ばしている。存在感を高める一方で新規参入も増えつつあり、競争激化は必至。認知度向上や信用力アップという課題も抱え、大手生保の対抗勢力に育つかは未知数な面もある。
人件費など大幅削減
「壁は厚いが、戦後からずっと続いてきた対面販売という『社会常識』を崩したい」
3月15日に東証マザーズに上場し、ネット専業生保として初の株式公開を果たしたライフネット生命保険の出口治明社長は、記者会見で業界の既成概念の打破に強い意欲をみせた。
業界最大手の日本生命保険の社員だった出口社長は、缶ビールをモデルに2008年5月に開業した。「飲食店で飲むビールと同じ味なら、スーパーなどで売られている安い缶ビールで十分という顧客に最適」という保険商品を売るビジネスモデルだ。
営業開始後は急ピッチで保有契約件数を伸ばし、今年2月には約11万3000件と前年同期の倍に増えた。急伸長の理由は、保険料の安さにある。例えば30歳男性で保険金3000万円(保険期間10年)の定期死亡保険の月払い保険料は3484円で、大手生保の半分程度にとどまるという。
インターネットに販路をほぼ絞ることで、人件費や固定費を大幅にカット。「安心して子供を産み育てることができる社会を、保険料を半分にして作りたい」との思いを具現化した。