薄くて軽く、省エネ性能に優れる有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)照明の事業化が加速している。パナソニックやパイオニアなどが先行して販売を始めたほか、東芝も製品化を検討している。まだ、価格が高く、LED(発光ダイオード)照明に比べて寿命が短いなどの課題もあるが、“次世代照明”としての注目度は高い。
東芝は、東京ビッグサイト(東京都江東区)で開催中のLED照明の総合展示会に、初めて有機EL照明を参考出品した。東日本大震災後に、電力不足が深刻化したなかで、急遽(きゅうきょ)開発を急いだ。昨年5月には、支援物資として、宮城県気仙沼市の避難所などに、有機ELパネルを使った試作の照明器具100個を提供した。製品化の時期はまだ決まっていないが、担当者は「市場拡大が大いに期待できる分野」と前向きだ。
有機EL照明は、有機物に電圧をかけることで有機物自体が発光する仕組みだ。薄くて軽く、曲げることもでき、「照明の可能性を広げられる」(メーカー関係者)と期待される。消費電力も白熱電球の8分の1程度で、省エネ性能も高い。
メーカー各社は昨年から有機EL照明を相次いで製品化している。
パナソニックは昨年末、有機EL照明の光源部分を発売した。照明器具メーカーや、住宅メーカー店舗から引き合いがあるほか、「紫外線や赤外線を含まないので、美術館でも使われている」(同社)という。
コニカミノルタホールディングスやパイオニア、有機EL照明の専業メーカー「ルミオテック」(山形県米沢市)もすでに、業務向けを発売したほか、NECライティングも製品化で最終調整に入っている。
ただ、価格が普及の障壁だ。パナソニックの約10センチ四方の正方形パネルが3万円程度、コニミノのサンプルキットはパネル4枚で15万7500円だ。「1枚1万円を切る水準でないと普及は進まない」(メーカー関係者)という声もある。
長寿命化も課題。パナソニックの現行品の寿命は1万時間で、LED並みの4万時間まで上げるのは「18年ごろになる」(同)という。
もっとも、家庭でも普及が広がってきたLED照明も、蛍光灯や白熱電球に比べて割高だが、東芝ライテックなどが4月から2割以上値下げし、低価格化が進む。有機EL照明でも量産技術が確立されれば低価格化が進み、本格普及につながりそうだ。