【ニッポン経済図鑑】理研化学工業 筆ペンの穂先が伝える感情 (1/2ページ)

2012.2.6 05:00

 気軽に買える値段でありながら、ひと書きで優雅さを表現できる筆ペン。パソコン全盛期のいま、その良さを伝えようと、筆ペンの穂先の生産に力を注ぐ企業が大阪府枚方市にある。繊細な製品を求める注文は、遠く海外からも寄せられている。同社が手がけるのは文具店でよく見かける筆ペンのほか、目の周囲を縁取るアイライナーなどのスポンジタイプの穂先だ。

 工程は、透き通ったビーズのようなポリウレタン樹脂に炭酸カルシウムを混ぜるところから始まる。熱と圧力を加え拳大にしたものを粉砕し、消しゴムのかすのような粉状にする。触るとふにゃふにゃと柔らかく、ほのかに温かい。

 「これが本当に筆ペンの穂先になるのか」。記者の不安を見抜いたように、社長の大月迪雄さん(64)が「だんだん形になってくるから、安心してください」と笑顔を見せる。

 次はいよいよ穂先の成型工程に入る。粉々になった材料を乗用車大の機械に流し入れる。

 すると、機械に取り付けられた2枚の鉄板が音を立てて合わさり、鉄板の穴から長さ2~3センチの白く細長い物体がポロポロと落ちる。先端はまだ太いが、穂先のイメージに近づいてきた。

 水洗いした後、6万4000本の穂先が入ったかごをクレーンでつり、塩酸入りの水槽につける。すると、一気に炭酸ガスが発生し、白い泡が沸き立つ。

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 ■油性用開発 海外展開に期待

 穂先からカルシウムが溶け出して、インクがしみ出る穴がスポンジ状に空く重要な工程だ。1週間後、今度は湯に浸し、約半日かけて乾燥させる。