世界の「SONY」ブランドが色あせている。かつて「トリニトロン」の美しい画像で世界中を魅了した看板のテレビ事業は、今期で8期連続の赤字だ。トップとして在籍した7年間のうち4年間も赤字を出したハワード・ストリンガー会長兼社長(69)が退き、平井一夫副社長(51)に全権を移譲するが、“失われた7年間”は戻らない。負の遺産も引き継ぐ平井氏は、いきなり厳しい試練に直面する。
「テレビは家庭の中心にあり、さまざまなコンテンツを楽しむための機器だ。簡単に撤退・縮小することはない」
会見で平井氏は、テレビ事業からの“不退転”を強調した。
当初は会長にとどまるとみられていたストリンガー氏の退任は、業績低迷を招いた責任を明確化するためだったとされる。だが、会見で経営責任を問われたストリンガー氏は「当然責任はあるが、リーマン・ショックや東日本大震災などに見舞われた。厳しかったのはソニーだけでなく、日本の電機産業全体に大きな問題がある」と、言い訳に終始した。
米テレビ局のCBSから招聘(しょうへい)されたストリンガー氏は、トップに就いた平成17年以降、製品のハードと映画や音楽などのソフトの融合を目指した。だが、ハード部門ではリストラが繰り返され、優秀な人材が集められたソフト偏重が色濃くなった。ストリンガー氏の「お気に入り」とされる平井氏も、ゲーム事業を赤字から建て直した実績はあるが、米音楽会子会社出身の「ソフト派」だ。「ここ数年でソニーの研究開発力は大きく落ちた」(アナリスト)。そんな指摘は少なくない。