飲食店の人気ランキングサイト「食べログ」で、多くの「やらせ業者」が順位を不当に上げる投稿を請け負っていたことが発覚し、投稿サイトの信頼性が急降下した。いわゆる「口コミ投稿」の内容を「本音の情報」と信頼していた人にとっては、やらせ情報を信用して、本来なら人気のない店に期待を抱いて並んでまで入ったのだから憤懣(ふんまん)やるかたないかもしれない。
しかし、やらせ情報に踊らされた人には申し訳ないが、自業自得と言わざるを得ない。食べログを運営するカカクコムはやらせ業者には「法的措置も視野に厳正に対応する」としており、被害を受けた利用者は経済的損失を被ったことになるが、道に落ちていたメモ用紙に「ここが美味(うま)い」と書いてあったのにどうしてくれるのか、と気色ばんでも、だれも相手にしてくれるはずがない。
インターネットが地球を覆うようになるにつれ、ネットに飛び交う情報の信憑(しんぴょう)性はまちまちで、責任の所在もあいまいなことが周知のはずだった。食べログには多様な価値観の投稿者による口コミがあり、正反対のことも書いてあるほど。口コミ情報の評価をうのみにできないことは多くの人が体験的に知っていることだ。しかし、やらせ投稿発覚のきっかけとなった東京・月島のもんじゃ焼き屋に食べログ利用者は押しかけた。そこには置き去りにされた「自己責任」と、マスコミと対極にある「口コミ情報」が信頼を得ているという事実がある。
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