任天堂は平成24年3月期の連結決算で、初の営業赤字に転落する見通しとなった。それを受け、株式市場では業績悪化を悲観した投資家の売りが相次ぎ、1月27日の任天堂の株価は約7年10カ月ぶりに1万円を割り込んだ。
業績が低迷したのは、23年2月に発売した携帯型ゲーム機「ニンテンドー3DS」(2万5000円)の販売不振が要因だ。「裸眼で立体視ができる」のが最大のウリだが、対応ソフトが少なく、本体価格1万円の値下げに追い込まれ、売れれば売れるだけ赤字が膨らむ悪循環に陥った。
「そもそもゲームに立体映像なんて必要なのか」と疑問を呈すゲーム愛好家も意外と多い。さらに追い打ちをかけたのは、1ドル=70円台という歴史的な円高水準。海外シェアの高い任天堂にとって為替差損が大きくのしかかった格好だ。
任天堂は明治時代に創業した花札やトランプの老舗企業だが、昭和58年にファミリーコンピューターを発売。ゲームソフト「スーパーマリオブラザーズ」は全世界で4千万本以上を売り上げる大ヒットとなり、ギネスブックにも登録。このスーパーマリオをきっかけに、任天堂の快進撃がスタートし、超優良企業にのし上がった。
平成16年に発売した折り畳み式の携帯ゲーム機「ニンテンドーDS」も国内外で1億5千万台を販売する大ヒットを記録。そのDSの後継機種として、満を持して世に送り出した「3DS」のつまずきが、初の営業赤字として顕在化したのだ。