映画業界では、公開中の「けいおん!」の動員をリピーターが後押し。座席指定券の半券を3つそろえると、本編の一部の「メモリアルフィルム」がもらえる特典があり、映画館では半券を張るための台紙も配布された。配給の松竹は「細部まで観察する熱心なファンが多い作品で、繰り返し見ていただくことへの恩返し」と説明する。ただ、転売も盛んで、キャラクターが多く映った“当たり”のフィルムは、ネットオークションで17万円の高値がついた。
こうした、同じ商品を何度も買わせる手法では肝心の「本体」がないがしろにされることもあり、古くは昭和60年代に流行したロッテの「ビックリマン・チョコ」で、キャラクターシール目当ての大量購入で菓子が捨てられ問題になった。ビックリマンは1個30円だったが、CDや映画チケットは価格が1千円を超え、さらにAKB48ではCDのみが発売後に安値転売されることが常態化している。
音楽評論家の富澤一誠さんは「CD不況の中、(特典商法は)ビジネスのアイデアとして評価できる」としつつ、「特定のファンなど『取れるところから取る』発想が前面に出すぎると、ランキングや売り上げが高まる半面で、国民に広く親しまれる作品は生まれにくくなる」と指摘している。(織田淳嗣)