しかし、アイフォーン発売の可能性について、ドコモの山田隆持社長は「諦めたわけではない」と繰り返してきた。もともとアップルがアイフォーンを日本に投入した08年。通信事業者はドコモが最有力とみられていた。契約条件や特許問題などが障害になったといわれるが、現在は、アップルがアンドロイド対抗策として複数の通信事業者にアイフォーンを供給する方針に転換している。
山田社長は「(米グーグルの基本ソフトである)アンドロイドを主軸にやっていく」と述べる一方で、キラー端末としてアイフォーン以上のスマホがないことを認める。アップルとしても、日本で最もアンドロイド端末を販売するドコモにアイフォーンを売らせるのが最大のアンドロイド対抗策となることは百も承知。参入に向けた環境はほぼ整ったといえる。
ソフトバンク、KDDIどう対抗
残る障害は、端末とサービスをセットで提供するアップルと、通信サービスを中核に端末開発、ネットサービスの総合展開を目指すドコモのビジネスモデルが衝突する点だ。ただ、それでもドコモの山田社長は、アイフォーンについて「端末の一つとして扱いたい」と販売に意欲を示す。
もちろん、アイフォーン5以外にも台風の目はある。が、やはり同じアップル。今夏までに投入すると噂されているタブレット型端末「iPad(アイパッド)3」だ。高精細ディスプレーとLTEが搭載されるとみられている。各社が製品化を競うタブレット型端末だが、この分野でも「売れているのは8割方アイパッド」(証券アナリスト)とアイパッドの競争力は抜きん出ている。LTE搭載となれば、アイフォーン同様にドコモの参入確率は高い。
アップル・ドコモの強力タッグの実現というXデーを前に、ソフトバンク、KDDIはどう対抗するか。価格競争激化を含め、市場は大荒れの展開も予想される。(芳賀由明)