スマートフォン(高機能携帯電話)を標的に、個人情報を不正に抜き出したり、架空のサービス料金を請求したりする悪質なソフト「マルウエア」の脅威が急速に広がっている。業務にスマホを利用する企業も増える中、ITセキュリティーサービス各社はスマホの安全を確保するソフトの開発ペースを加速し、新製品を相次ぎ投入した。スマホの出荷台数が従来型携帯電話を逆転する見込みの2012年、セキュリティーソフトの国内市場規模は、初めて2000億円の大台を突破しそうだ。
累計1000種超確認
「パソコン向けは1年ごとに新バージョンを出してきたが、今後は同じ年に何回も発売していく」。米シマンテックで一般向けセキュリティーソフトの更新戦略を担うジャニス・チャフィン・グループプレジデントは、スマホの普及や機能進化への素早い対応がシェア確保に必須だと力説する。
スマホは従来型携帯より格段に高い機能をそなえた分、PCと同様のリスクが付きまとう。同社が、米グーグルの基本ソフト(OS)「アンドロイド」を搭載したスマホ対応のセキュリティーソフトを発売したのは2011年3月。その8カ月後には、情報流出対策の新機能を追加したバージョンを発売した。
各社を突き動かすのは、スマホを狙う脅威の急増だ。
トレンドマイクロの調査によると、アンドロイド端末に感染するマルウエアの検出数は2011年9月までの9カ月間で243種だった。しかし翌10月には、単月で290種の出現を確認。12月には累計1000種を超えた。