2011.10.21 05:00
欧米で電子書籍旋風を巻き起こしているインターネット通販最大手の米アマゾン・ドット・コムが、日本市場参入に向け、複数の出版社と契約合意したことが20日、分かった。年内にも日本語の電子書籍購入サイトを開設し、自社の電子書籍専用端末「キンドル」も販売する見込み。日本は国内勢の参入が相次いだ昨年、「電子書籍元年」と呼ばれたが、コンテンツ不足や専用端末の販売不振もあって足踏み状態が続いている。そんな中での“黒船の襲来”は市場活性化の期待と同時に、国内勢にとって厳しい生き残り競争が始まることを意味する。
アマゾンが製造・販売するキンドルは2007年に米国で発売され、モデルチェンジのたびに小型・軽量化が進展。米国で11月中旬以降に発売される第4世代機は最安で79ドル(約6000円)と1万円を切る低価格を実現した。米国では販売書籍数100万点以上をそろえ、すでにキンドル向けの販売冊数が紙の本を上回る“逆転現象”が起こっている。
アマゾンは日本市場への参入をにらみ、数年前から出版各社と契約を交渉してきたが、難航したもようだ。
背景には、日米の価格決定権の主導権の違いがある。米国では、アマゾンが価格決定権を握り、紙の本よりも大幅に安い価格を設定することで電子書籍の普及拡大を図ってきた。一方、日本は出版社に価格決定権があり、「本がダンピングされ、価格破壊が起こりかねない」(出版社幹部)という懸念をぬぐえなかった。
だが関係者によると、アマゾンは価格や発売のタイミングについて出版社側と事前協議することを提案。PHP研究所(京都市)と基本合意に至ったほか、「現時点で大手を含む複数の出版社が合意している」(出版社幹部)という。