≪STORY≫
しじみに多く含まれていることで知られ、肝臓の働きを助けるアミノ酸の一種、オルニチン。このアミノ酸を含んだ永谷園の即席みそ汁「1杯でしじみ70個分のちから みそ汁」が消費者の支持を集めている。健康志向にマッチし、機能性即席みそ汁市場という新ジャンルを切り開いた。その開発は、研究室で偶然発見された乳酸菌から始まった。
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2007年11月、東京都大田区にある永谷園の研究室。あるアミノ酸を生成する乳酸菌を探していた研究員が、分析装置の画面に映し出されたグラフに想定外の「山」ができていることに気づいた。このとき培養されていた乳酸菌が「L・ブレビス9E53」。想定外の山はオルニチンが生成された証しだった。
オルニチンは栄養学を学んだ経験があれば、誰でも知っているアミノ酸。肝臓内でアンモニアを分解する過程で重要な役割を果たし、オルニチンの摂取は肝機能を活性化させ、二日酔いや疲労を回復させる効果があるとされる。
熊谷道正研究部長は「オルニチンといえば、しじみというのがわれわれの間では常識。しじみと言えばみそ汁ですから、『あさげ』などの即席みそ汁を手がける永谷園にはぴったりのアミノ酸だった」と発見当時を振り返る。
しかし、偶然から始まった商品開発には大きな障害があった。それは食品として必須の要素といえる「味」だった。みその生成に必要な材料は大豆、麹(こうじ)、塩、酵母。ここに発見された乳酸菌を加えれば、オルニチン入りのみそができるが、乳酸菌を加えたことでどうしても味に酸味が出てしまう。研究室で初めて出来上がったオルニチンみそは「とても食べられないひどい味だった」という。