あなたがいま、あの人を「許せない」3つの心理的原因 相手の態度を変える“健全な”方法

一時の感情に振り回されず、具体的なリクエストを

相手がミスや裏切りをしたときに、自分の感情に振り回されていると「この人はダメだ」という諦めや決めつけのような思いが浮かんでくることもあると思います。

怒りや不安は人間にとってあたりまえの感情ですので、そう思ってしまう自分を責める必要はありません。「今自分は、相手の態度にショックを受けているんだな」「本当は〇〇して欲しかったんだな」「××と言ったことに怒っているんだな」というように自分の気持ちを確認し、優しく受け止めましょう。

しかし、不快感情に振り回されて大事に思っている相手を傷つけるような発言をするのとは別問題です。怒りをぶつければスッキリしそうですが、不快感情の反芻は怒りを増大させてしまいます。いい関係を継続したいのであれば、納得できないという気持ちは、具体的なリクエストに変換して伝えるようにしましょう。

《例》

「注意を怠っていたことを認めて謝ってほしい」

「今後、どうすれば繰り返さないで済むかの対策を考えてほしい」など


多くの研究結果が示唆「許すことは心身に良い」

皆さんも体感していると思いますが、ストレスが健康に悪影響を及ぼすといった類の研究も数多くあります(Henry, 1992; Holahan and Moos, 1985;など)。今回紹介した、許すことが難しい3つ理由の他にも、許しを阻害する要因は数多くあります。許すことは簡単ではありませんが、許さないでいることによる心身のデメリットは無視できません。

例えば、成人男性を対象にした研究では、許せない状況は、アルコールやタバコの使用といった不健康な生活習慣に繋がりやすいことが示唆されていますし(Seybold, 2001)、許せない裏切り体験を思い出すことで、拡張期血圧、平均動脈圧など心血管系の反応に影響を与えるという研究もあります(Lawler, 2003)。

許すことが精神的にいい影響を与えることは、皆さん体感していると思いますが、許しは健康へも影響を及ぼすことが様々な研究で示唆されています。例えば、許すことができる人は、不安、怒り、抑うつが少なく、ヘマトクリット値と白血球数が低く、TxPA値が高いなど健康に関する指標がよい傾向があります(Seybold, 2001)。

嫌な人とは関係を切ってしまえばいいと思う人もいると思います。筆者も嫌な人とは距離をおきたいタイプですが、孤独、疎外、社会的孤立が健康に及ぼす影響について書かれた文献を見ると(Berkman, 1986; Seeman, 1996など)、対人関係の対立をうまく処理することは健康を維持する上でも大切だと感じます。


具体的に伝えることで、未来が変わる

何もかも受容する必要はありませんが、もし大事にしたい人との間にトラブルが起きた場合には、ご紹介した3つの「理由」と「対処法」を思い出してみてください。怒りをぶつける代わりに、具体的にリクエストする。このように伝え方を変えれば、相手の態度も変わります。

もし周りにあなたを不快にさせる人が多いと感じる場合には、あなたの伝え方を変えてみましょう。コミュニケーションには相互作用がありますので、関係性や未来も変わるはずです。

参考文献


Berkman, L. F. (1986). Social networks, support, and health: Taking the next step forward. American Journal of Epidemiology, 123(4), 559-562.


Henry, J. P. (1992). Biological basis of the stress response. Integrative physiological and behavioral science, 27(1), 66-83.


Holahan, C. J., & Moos, R. H. (1985). Life stress and health: personality, coping, and family support in stress resistance. Journal of personality and Social Psychology, 49(3), 739.


Lawler, K. A., Younger, J. W., Piferi, R. L., Billington, E., Jobe, R., Edmondson, K., & Jones, W. H. (2003). A change of heart: Cardiovascular correlates of forgiveness in response to interpersonal conflict. Journal of behavioral medicine, 26(5), 373-393.


Seeman, T. E. (1996). Social ties and health: The benefits of social integration. Annals of epidemiology, 6(5), 442-451.


Seybold, K. S., Hill, P. C., Neumann, J. K., & Chi, D. S. (2001). Physiological and psychological correlates of forgiveness. Journal of Psychology and Christianity.

最強のコミュニケーション術は、コミュニケーション研究家の藤田尚弓さんが、様々なコミュニケーションの場面をテーマに、ビジネスシーンですぐに役立つ行動パターンや言い回しを心理学の理論も参考にしながらご紹介する連載コラムです。アーカイブはこちら

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